夏の観光シーズンに合わせ、従来の遊覧船に「わざわざ乗りたくなる新しい理由」と、家族の記憶に残る目玉をつくりたい。伊豆クルーズ様が運航する「下田港内めぐり」で、TOBIDASEは約78メートルの黒船が遊覧船のそばに現れるWebARを企画・開発しました。
出典:伊豆下田経済新聞・TOBIDASE制作記録
依頼前の悩み:夏の遊覧船に新しい乗船理由をつくりたい
下田港内めぐりは、黒船を模した遊覧船「サスケハナ」で下田港を一周する約20分の船旅です。依頼時の中心課題は、従来の景色や歴史案内に加えて、ファミリー層が夏に体験したくなる、新しい楽しみをつくることでした。
初期の打ち合わせでは、「遊覧船を幽霊船のように変える」「幕末当時の黒船らしい体験にする」といったアイデアも挙がっていました。一方で、動画プロモーションだけにするのか、現地イベントへARを組み込むのかは決まっていませんでした。
ARで何ができるかを、3案から比較
TOBIDASEは、夏のファミリー向け施策として次の3案を提示しました。
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01ARスタンプラリー
港周辺を巡り、場所ごとに異なるAR体験を集める回遊型の企画。
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02伊豆にはどんな生き物がいるのかな?
伊豆の海の生き物をARで探し、親子で一緒に学べる体験。
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03浮世絵の世界に入っちゃおう
下田の歴史を、浮世絵の中へ入り込む撮影体験に変える企画。
比較の結果、依頼側にあった黒船のアイデアとARを組み合わせ、下田港の歴史と最も自然につながり、子どもにも一目で驚きが伝わる「実物大の黒船AR」に絞り込みました。
採用案:実物大78mの黒船が遊覧船と並走
船内のQRコードからWebARを起動すると、幕末に下田へ来航した黒船が遊覧船と並走するように現れます。黒船は遊覧船のおよそ2倍、全長約78メートル。画面をタップすると煙が上がり、大砲を発射する演出も体験できます。
専用アプリをインストールせず、その場で始められるWebARを採用しました。2025年7月25日の公開時はiOS端末に対応し、乗船運賃以外の追加料金なしで提供されました。
実際のAR画面



制作した体験:QRコードから黒船来航まで
- 船内の案内物にあるQRコードをスマートフォンで読み取る
- 港の景色へカメラを向けると、海上に黒船が出現する
- 遊覧船の進行に合わせ、黒船の大きさと距離感が変化する
- 画面をタップし、煙や大砲のインタラクションを楽しむ
TOBIDASEは、企画とWebAR本体に加えて、3Dモデル、煙・大砲のアニメーション、QRコードから体験を始めるための船内案内物も制作しました。


最大の難所:動く船上で78mのスケールを成立させる
制作で最も難しかったのは、動いている遊覧船の上から、実物大の黒船を安定した位置と大きさで見せることでした。海上には位置合わせの基準が少なく、黒船が大きいほど、わずかな調整差でも遊覧船との距離感が不自然に見えます。
そこで実際に遊覧船へ乗り、スマートフォンで確認しながら、黒船の出現位置、大きさ、見える距離を繰り返し調整しました。企画から現地検証、修正、公開までは約4カ月。机上の確認だけで終わらせず、実際に乗船する環境で体験が成立するところまで仕上げています。

成果:夏に公開し、地元メディアにも掲載
黒船ARは夏の観光シーズンに合わせて公開され、下田港内めぐりの新しい船上体験として実運用されました。実物大の黒船と大砲演出は地元紙に掲載され、伊豆下田経済新聞でも、開発期間や距離感の調整、運営側が伝えたかった黒船のスケール感と威圧感が紹介されています。

確認できる成果:夏季公開、遊覧船上での実運用、地元メディア掲載。確認できない利用数やSNS投稿数は成果として記載していません。
観光ARを「場所に合った体験」にするために
この事例で重視したのは、ARを置くこと自体ではなく、下田港で、遊覧船に乗っているからこそ成立する体験にすることでした。企画が決まっていない段階でも、目的と現地条件から複数案を比較し、3D・開発・案内物・実機検証まで一つの制作工程として設計できます。