- 結論を3行で
- 自治体ARでできることは7類型|地域活性化の目的から選ぶ
- 自治体・地域向けAR活用事例5件の比較
- 【観光・周遊】現地でしか撮れない体験で誘客したAR事例
- 下田港内めぐりAR(静岡県下田市)|目の前に全長78mの黒船
- 宇佐のマチュピチュAR(大分県宇佐市)|手ぶらで変身する観光PR
- 【地域活性化・商店街】まちの回遊とにぎわいを生んだAR事例
- 桜新町「サザエさんAR」(東京都世田谷区)|中止した祭りを回遊体験に
- 【季節・イベント】その場を主役に変えたAR事例
- 健軍・冬に咲く桜AR(熊本県熊本市)|季節を越えたお花見体験
- 舞鶴カレーフェスタAR(京都府舞鶴市)|会場全体をフォトスポットに
- 公的データで見る自治体AR|岡崎市は表示1,034回・体験254人
- 事例に共通する成功パターン|自治体がARで失敗しない3原則
- 自治体・市役所がAR導入を進める4手順
- 1. 地域課題とKPIを一文で定義する
- 2. 配信方式・現地動線・アクセシビリティを決める
- 3. 予算・調達・権利処理を同時に進める
- 4. 公開前テストと効果測定を設計する
- よくある質問
- 自治体のAR導入で、まず何から始めればよいですか?
- アプリのダウンロードは必要ですか?高齢の来場者でも使えますか?
- 費用や制作期間はどれくらいですか?補助金は使えますか?
- 人気キャラクターや地域IPを使ったAR演出はできますか?
- AR施策の効果はどのように測れますか?
結論を3行で
- 自治体のAR活用は、観光周遊・史跡復元・イベント・広報・教育・防災・スマートシティの7類型に整理でき、地域課題とKPIから施策を選ぶのが第一歩です。
- 観光・地域イベントの掲載事例には「場所固有のストーリー」「参加ハードルを下げる」「測定と共有を先に設計する」という共通点があります。
- 本記事ではTOBIDASEが手がけた5都府県の地域向け案件に、岡崎市の公的な成果データを加え、導入手順・費用・補助金まで解説します。
「自治体でARを導入した事例を、成果や導入判断とセットで知りたい」という担当者向けに、AR活用を目的別に整理します。本記事の自社事例には、自治体の直営事業だけでなく、観光事業者・商店街・地域イベントなど、自治体と同じ地域課題に取り組む案件を含みます。発注主体を一括して「自治体」とみなすのではなく、地域課題、実施主体、配信方式、KPIを分けて読むことが、再現可能な事例比較のポイントです。
自治体ARでできることは7類型|地域活性化の目的から選ぶ
検索上の「自治体 AR 事例」には、観光やイベントだけでなく、防災・教育・行政広報まで含む幅広い意図があります。まず「ARで何を見せるか」ではなく、「住民や来訪者にどんな行動を促したいか」で類型を選びます。
| 活用類型 | 解決したい地域課題 | 代表的なAR施策 | 主なKPI |
|---|---|---|---|
| 観光周遊 | 滞在時間・立寄り地点を増やしたい | ARガイド、周遊型AR、スタンプラリー | 起動数、地点到達数、完走率 |
| 史跡・文化 | 消失した建物や歴史を現地で伝えたい | 原寸復元、解説アニメーション、多言語ガイド | 閲覧数、滞在時間、満足度 |
| イベント・UGC | 来場者の撮影・共有を促したい | フォトAR、キャラクターAR、季節演出 | 撮影・保存、投稿、ハッシュタグ言及 |
| 広報 | 紙面や展示の情報量を拡張したい | 広報誌・ポスター連動動画、3D解説 | 読取数、動画完了率、遷移数 |
| 教育 | 地域学習を体験型にしたい | 文化財解説、クイズ、探究学習 | 参加者数、正答率、理解度 |
| 防災 | 災害を自分ごととして学んでもらいたい | 浸水・煙・避難行動の疑似体験 | 受講者数、理解度、訓練完了率 |
| スマートシティ | 回遊施策をデータで改善したい | 位置別コンテンツ、流入経路別QR、行動分析 | 地点別再生、流入元、回遊経路 |
自治体・地域向けAR活用事例5件の比較
ここからは自社が制作に関わった5案件を、観光・地域活性化・イベントの3領域で比較します。いずれも地域固有の物語を体験へ変えた事例ですが、自治体直営に限らないため、実施主体や調達条件は自地域の状況に置き換えてください。
| 事例 | 地域課題 | 施策の核 | 確認できる成果・反応 |
|---|---|---|---|
| 下田港 | 乗船体験の魅力を増やす | 全長78mの黒船を海上へ原寸表示 | 地域メディア掲載、SNSでの体験共有 |
| 宇佐 | 絶景観光を参加型にする | デジタル衣装とご当地キャラ | 手ぶらで撮影できる体験を提供 |
| 桜新町 | 祭り中止時も街を回遊してもらう | 街の4カ所にキャラクターAR | 非接触の回遊体験を実現 |
| 健軍 | 冬の祭りに季節外の桜を生む | 桜吹雪の空間演出 | デモと現地想定で表現を調整 |
| 舞鶴 | 会場からの撮影・共有を促す | カレーと船の手描き風AR | 会場全体をフォトゾーン化 |
【観光・周遊】現地でしか撮れない体験で誘客したAR事例
観光領域でARが効くのは、「景観を眺める」だけの受動的な観光を、来訪者が主役になる能動的な体験へ変えられるからです。人物や歴史上の対象が風景の一部になる写真・動画は、その場所を知らない人へも体験価値を伝えられます。
下田港内めぐりAR(静岡県下田市)|目の前に全長78mの黒船
幕末に黒船が来航した歴史を持つ下田市。遊覧船「下田港内めぐり」様は、乗船客に「新しい楽しみ」を提供したいという課題をお持ちでした。TOBIDASEは、アプリのダウンロードが不要なWebARを提案。QRコードを読み取ると、遊覧船と並走するように目の前の海上へ全長78mの黒船がARで出現し、画面タップで黒船が煙を上げ大砲を撃つインタラクティブな演出を加えました。

その革新性と話題性から地元の新聞に取り上げられ、下田港内めぐりの新たな魅力として認知されるきっかけになりました。乗船客がAR体験の様子をSNSで共有する機会も生まれています。WebARにしたことでインストール工程を省き、乗船中でも案内から体験へ移りやすい導線にしました。制作の詳細は「下田港内めぐりAR「全長78mの黒船、目の前に出現!」」で公開しています。
宇佐のマチュピチュAR(大分県宇佐市)|手ぶらで変身する観光PR
「宇佐のマチュピチュ」と呼ばれる大分県宇佐市・西椎屋地区の絶景。ここでは、スマートフォンのカメラを向けるだけでデジタルの民族衣装に変身し、宇佐市の観光キャラクターと一緒に記念撮影できるARエフェクトを制作しました。物理的な衣装貸し出しに伴う管理コストや衛生面の懸念を解消しつつ、来場者へ均等な変身体験を提供できるのがデジタルならではの強みです。

ポイントは、単なる風景写真より「人物が特定の衣装を着ている」視覚的な変化を作れること。宇佐のマチュピチュという固有の場所と変身体験を組み合わせ、「ここで撮りたい」という動機を設計しました。現地の案内では「何ができるか・どう操作するか・どこへ共有するか」を短く示し、参加手順が伝わる導線を作ることが重要です。
【地域活性化・商店街】まちの回遊とにぎわいを生んだAR事例
商店街や地域イベントでは、回遊性の向上——エリア全体を歩いてもらい滞在時間を延ばすこと——が重要課題です。ARは大型造作やステージを設けずに、街の各所へ体験ポイントを置けます。
桜新町「サザエさんAR」(東京都世田谷区)|中止した祭りを回遊体験に
「サザエさんの街」として知られる東京都世田谷区の桜新町。例年の「桜新町ねぶた祭り」がコロナ禍で中止を余儀なくされるなか、その活気を取り戻すために導入されたのが商店街の4カ所を巡るARでした。実施当時は各所のQRコードを読み取るとInstagramが起動し、空間にサザエさん一家が出現。漫画のワンシーンをもとに一家が傘で空を旅する浮遊アニメーションで再現し、画面の黄色いアイコンをタップすると一家が四方八方に舞い踊る仕掛けを搭載しました。
アニメを彷彿とさせる効果音を加えて視覚と聴覚の両面から楽しさを演出し、実施当時はInstagramストーリーズカメラを採用。「非接触」と「エンゲージメント」を両立し、デジタルが「集まれない」という物理的な壁を越えて地域の魅力を再発見させる可能性を示した事例です。
【季節・イベント】その場を主役に変えたAR事例
季節イベントや地域フェスでは、天候・季節という「変えられない条件」をARが補い、その場を主役に変えることができます。ここでは熊本と京都の2事例を紹介します。
健軍・冬に咲く桜AR(熊本県熊本市)|季節を越えたお花見体験
熊本市東部の健軍(けんぐん)で冬に開催される「健軍桜祭り」。冬に本物の桜は咲かないため、「冬にしかできない桜の体験を創る」という逆転の発想から、人気漫画『ONE PIECE』ドラム王国の「冬に降る桜」に着想を得たARエフェクトを制作しました。高密度のパーティクルシステムで、雪のようにしんしんと、しかし鮮やかに舞うピンクの桜吹雪を実装しています。

制作では、クライアントや協力団体との合意形成のためにデモエフェクトを早期に構築。桜の粒子の大きさや舞い落ちる速度、夜間ライトアップでも美しく映える発光パラメータをプロトタイプで検証しました。頭の中のイメージと実際のスマホ画面での見え方にはギャップが生じるため、早い段階で簡易デモを作り現地条件でテストすることがクオリティ向上の近道になります。
舞鶴カレーフェスタAR(京都府舞鶴市)|会場全体をフォトスポットに
京都府舞鶴市の日本遺産「舞鶴赤れんがパーク」で開催される、海軍ゆかりのカレーが集う舞鶴カレーフェスタ。ここでは実施当時、来場者がその場で使えるInstagramリール・ストーリー用のARエフェクトを制作しました。海軍ゆかりの「カレー」や「船」をモチーフにした手書き風イラストが画面上部から降り注ぐ演出で、赤れんが倉庫のレトロな雰囲気と調和させています。

あえてリアルな写真ではなく温かみのある手書き風イラストを採用し、幅広い来場者が使いやすいデザインにしました。歴史的建造物である赤れんがパークは、それ自体が撮影スポットです。ARは現実の風景にデジタル情報を重ねるため、会場のどこにいてもその場所を特別なフォトゾーンに変えられます。設計上は「主役(来場者の顔や料理)を隠さない」ようパーティクルの中央視認性を確保し、自撮りや料理撮影をしやすい余白を残しました。
公的データで見る自治体AR|岡崎市は表示1,034回・体験254人
自社案件とは別に、自治体ARのKPIを公表している事例として、愛知県の「岡崎まちなかARウォーキング」が参考になります。岡崎市・株式会社一旗・NTT西日本で構成する協議会が、2023年12月から2024年3月にかけて、市内5スポットの歴史観光資源を使った回遊実証を行いました。
愛知県の成果資料では、現地誘導が流入の23%、サイネージが8%、チラシ等が4%と分けて計測されています。また、近いスポットは再生が多く、ルートから外れたスポットは少なかったこと、事後分析を念頭に事業を設計する必要があることも総括されています。
事例に共通する成功パターン|自治体がARで失敗しない3原則
自社の5案件と岡崎市の公的データを並べると、成果につながるAR施策には共通する設計思想が見えてきます。自治体AR施策の成否は、技術の派手さではなく「その土地でしか成立しない必然性」と「公開後に改善できる計測」を両立できるかで決まります。
| 原則 | 具体的にやること | 効く理由 |
|---|---|---|
| 場所固有のストーリー | 土地の歴史・IP・季節を演出に織り込む(黒船・サザエさん・冬の桜・海軍カレー) | 「ここでしか体験できない」必然性が生まれる |
| 参加ハードルを下げる | アプリ不要のWebAR、短いQR導線、分かりやすい現地案内 | 初見の来場者が操作で迷う箇所を減らせる |
| 測定と共有を先に設計 | 地点別QR、保存しやすい画面、投稿先・ハッシュタグ案内、分析イベント実装 | 流入・回遊・AR操作・共有を分けて改善できる |
自治体・市役所がAR導入を進める4手順
事例を庁内の企画へ変えるには、ARの演出案より先に、地域課題・実施主体・調達・計測を決めます。予算要求や公募仕様書で説明できる粒度に落とす4手順です。
1. 地域課題とKPIを一文で定義する
「ARで地域を盛り上げる」では、方式も見積もりも決まりません。「観光客を駅前から3スポットへ回遊させ、地点到達率と完走率を測る」のように、対象者・促す行動・測る指標を一文にします。
自治体ARの企画書は、演出案より先に「誰をどこへ動かし、何を計測するか」を一文で定義すると、事例比較と予算説明がぶれません。
2. 配信方式・現地動線・アクセシビリティを決める
常設か期間限定か、WebARか現行のSNSプラットフォームか、位置情報や画像認識が必要かを決めます。来場者の端末、通信環境、カメラ権限、案内板の文字サイズ、多言語、車いす・ベビーカーの動線も同時に確認します。過去のInstagram事例をそのまま再現するのではなく、企画時点で提供中の方式から選びます。
3. 予算・調達・権利処理を同時に進める
見積もりでは、企画、デザイン、3D・アニメーション、システム、現地テスト、サーバー・保守、効果測定を分けます。キャラクターや文化財画像を使う場合は、許諾範囲、利用期間、二次利用、監修回数も仕様へ入れます。補助金を使わない場合も含む稟議の組み立て方は「自治体ARの予算取り・稟議実務」で、施策別の金額は「AR制作の費用相場」と「ARスタンプラリーの費用相場」で確認できます。
令和8年度「全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業」では、観光地の販路拡大・マーケティング強化区分のデジタルツール導入支援が補助率1/2・上限1,500万円でした。ただし、ARスタンプラリーなら自動的に対象になるわけではありません。令和8年度の一次公募は終了し、二次公募予定もないため、次年度以降は観光庁の最新要領を確認してください。制度の読み方は「観光DX補助金でARスタンプラリーを導入する方法」、現在の公募状況は令和8年度公式サイトにまとまっています。
4. 公開前テストと効果測定を設計する
現地テストでは、対応端末、回線、読み取り位置、日中・夜間の視認性、混雑時の安全性を確認します。分析では、ページ表示、セッション、AR開始、特定操作、地点到達、完了を別イベントとして定義します。ページ表示は「体験完了」や「ユニーク参加者」と同じではありません。公募時点でダッシュボードや報告書の項目まで指定すると、実施後の検証が容易になります。
よくある質問
Q. 自治体のAR導入で、まず何から始めればよいですか?
A. 「誘客・回遊・学習・防災・話題化」のどの成果を狙うかを1つ選び、対象者・促す行動・KPIを一文にします。その後に、WebAR、周遊型AR、フォトAR、史跡復元などの方式を比較してください。
Q. アプリのダウンロードは必要ですか?高齢の来場者でも使えますか?
A. WebAR形式なら、QRコードやURLからブラウザで起動でき、専用アプリのインストールを省けます。ただし、カメラ権限、対応端末、通信速度の影響は受けます。大きな案内文字、短い操作手順、現地スタッフの説明を含めて設計します。
Q. 費用や制作期間はどれくらいですか?補助金は使えますか?
A. フォトAR単体か、複数スポットを巡るWebARか、3D復元を伴う常設施策かで変わります。令和8年度の観光DX推進事業には補助率1/2・上限1,500万円の区分がありましたが、対象者と事業要件があり、同年度の公募は終了済みです。最新年度の要領を確認し、補助対象外の費用も含めて予算化してください。
Q. 人気キャラクターや地域IPを使ったAR演出はできますか?
A. 可能です。桜新町のサザエさんARのように強い訴求になりますが、権利元の許諾と利用範囲の確認が前提です。公開期間、地域、媒体、撮影物の二次利用、監修回数を企画段階で整理します。
Q. AR施策の効果はどのように測れますか?
A. WebAR側に分析機能を実装すれば、ページ表示、セッション、AR開始、特定操作、地点到達、完了など、あらかじめ定義した指標を計測できます。ページ表示は「体験完了」や「ユニーク参加者数」とは別の指標です。SNS投稿数やメディア掲載は、公開範囲と集計方法を決めて別途確認します。
自治体のAR活用を、「映える」で終わらせず地域の成果につなげたい。観光誘客・まちの回遊・イベントの話題化まで、企画、制作、現地テスト、効果測定をTOBIDASEが伴走します。事例の詳細資料や概算のご相談は、自治体ARの企画・費用相談からご連絡ください。